金澤健一氏
金澤健一氏

 ニコン(タイランド)社長


教育の発展で人材不足解消を。だから教育支援。

 「今日のタイ国の発展は多くを工業部門の発展によっています。世界各国の企業がタイに投資して事業を行っていますが、なかでも日本企業の進出にはめざましいものがあります。そして現在ではエンジニアをはじめとし、企業に必要な人材が不足しています。もし、タイの教育が今よりももっと発展し、国民がみな同等に高い教育を受けることができるようになれば、人びとの就職機会は増え、生活レベルはさらに向上するでしょう。ひいては国の経済、そして国民生活の全体に良い結果をもたらすことは間違いありません。」

 ニコン(タイランド)株式会社社長の金澤健一さんはタイの国を発展させ貧困をなくすための重要な鍵となるのは「教育」であると考えています。しかし残念なことに、貧困ゆえ高等教育や基礎教育すら受けることができない人がまだまだ多いのです。

 金澤さんは今から5年前にニコン(タイランド)株式会社に来ました。ちょうどその頃タイの経済状態はあまり芳しいものではありませんでした。金澤さんは当時を振り返りながらこう語ります。
 「あの頃は、まだ1997年のバーツショックの影響が色濃く残っていてバンコクも今ほどきれいじゃなかったし、建設工事の中断されたビルがそこかしこにありました。走っている車も今のような新しいモデルじゃありませんでした。」

 現在、タイの経済は東南アジア地域の中で最もめざましい発展を遂げています。しかし、ひとつ心配なのは人材開発です。なぜなら、現在のタイの教育は進むべき方向がはっきりせず、さらに教育機会が均等とは言えないからです。こうしたことは、国の発展にとって大きな障壁であると言えるでしょう。

 「タイの貧困問題の克服が難しいということについてですが、実は日本にも収入の少ない貧しい人たちはいます。けれども、私たちはみな平等に教育を受けています。あと、それ以上の教育を望むかどうかは、そのひと次第です。しかしタイは違います。高等教育の機会は、お金をもった裕福な階層にだけ開かれています。ですから、そうした階層以下の人びとは新しい知識や技術を学ぶことができず仕事に就くための資格を得られません。するとやはり十分な収入を得ることはできませんので、子どもたちに高等教育を受けさせてあげることができません……。この繰り返しですね。」

 そこで、民間企業やNGO・NPOなどの開発援助組織が必要になってきます。金澤さんも国の発展にとって、これらの団体の活動が重要であると考えています。
 「なぜかと言えば、政府が全てを行おうとしても現実にはなかなか進みません。それにいろいろと煩雑な手続きがあって、そこを通過しなくてはならないでしょう。また問題の内容によっては、政府はその存在に気づいてすらいないということもあります。ところが、民間の開発援助組織が援助の手を差しのべることによって、問題解決の幅がぐんとひろがり、またそれはいろんな角度を視野に含めた包括的なものになっていくわけです。」

 ニコンは、ニコンのカメラで撮られた写真を世界中から集めてフォトコンテストを開催するなど、様々な文化活動を推進していますが、社会支援活動にも熱心で、日本の親会社が活動の母体となって特別に設けられたセクションがあり、障害児童の支援活動などを継続して行っているそうです。

 一方、ニコン(タイランド)株式会社では社会活動を行うための特別なセクションといったものこそありませんが、親会社同様、社会の支援となる様々な活動を行っています。たとえば、スマトラ沖地震・津波の被害者救済のために全社をあげて募金活動を行いました。また、会社の名義ではありませんが、金澤さんや他の方々が、個人でダルニー奨学金を支援されています。会社では現在、日本人とタイ人のマネージャークラスが集まり、ニコン(タイランド)株式会社としてどのような社会活動を展開していったらよいか話し合っているところだそうです。

 金澤さんは個人的にイサーンを訪問したいそうです。
 「私も自分がドナーとなって支援しているイサーンの子供たちに会いに行きたいと思っています。でもなかなか時間がとれず実現していません。ダルニー奨学生の皆さんには是非がんばって勉強してもらいたいと思います。それからできる限りご家族のみなさんを助けてあげて欲しいですね。ときには苦しいこともあるだろうけれど、でも、自分自身のため、そして家族のためと思って、忍耐強くがんばってください。」


 

(2006年6月、ダルニーニュース7号より)
 

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